苛酷な人生体験を和歌と日記に昇華させた後宮女房二人の中世文学の傑作。
本書は、壇ノ浦で戦死した平資盛(すけもり)との悲恋を詠み込んだ私家集『建礼門院右京大夫集』と後深草院に愛されたがために、数奇な人生をたどることになった二条という女性の告白の記『とはずがたり』の二点を収載しました。いずれも中世を生きた女性二人による傑作の評価が高い作品です。 安徳天皇の生母として、一時は国母と仰がれた平清盛の娘建礼門院徳子は、宮廷の頂点から一転、平家一門の敗走劇に随行し、比類ない幸福と不幸にみまわれた悲劇の女性としてつとに有名です。その徳子の全盛に仕え、彼女の甥の資盛と秘密の恋愛を育んでいったのが右京大夫(うきょうのだいぶ)という女性です。 歌集は平家滅亡の時代の証言ともなっているほか、別の恋人の存在や女友だちとの交流、父母への思いなども綴られ、人生の情感を写しとる作者の才能を感じさせます。 『とはずがたり』は昭和時代になってから発見公表され、「埋もれた古典」とも称される異色の名作です。後深草・亀山院の対立など、後の南北朝時代の端緒にもなった宮廷の愛憎劇を背景に、後深草院の気まぐれから『源氏物語』を地でいく愛欲の渦にのまれた作者のあまりにも苛酷な人生が、驚くほど冷静な筆致で記されています。 両者とも、世間に翻弄されつつも、わが身に正直に生きた無辜(むこ)なる女性の姿を伝えて、現代に共感と感銘をもたらす作品です。
<シリーズ説明>第一期48巻には、日本を代表する古典、日本人としてぜひ読んでおきたいベーシックでポピュラーな作品を収録。上段に頭注、中段に原文、下段に現代語訳と同一ページにすべてを配した読みやすい3段組みです。注番号や見出し、有職図版、鑑賞注などは見やすい色刷りに。原文は最良の底本を使用、校注者には最高の執筆陣を動員。なめらかな現代語訳、現在通行の字体で表記した原文、わかりやすく、しかも原文の感動が伝わります。巻末には、作品の成立や時代背景などを解説、さらに地図・系図・年表索引なども充実させました。( )内は校注・訳者。第二期40巻には、中古、中世、近世にわたり、日本人としてぜひ読んでおきたい珠玉の名作をバランスよく選びました。長い歳月を読み継がれてきた文学作品の魅力を余すところなくお届けします。いまいちばん新しく、いちばん読みやすい古典文学全集であると同時に、あなたの、そして次世代への価値ある知的財産でもあります。上段に頭注、中段に原文、下段に現代語訳と同一ページにすべてを配した読みやすい3段組です。注番号や見出し、有職図版、鑑賞法などは見やすい色刷りに。原文は最良の低本を使用、校注者には最高の執筆陣を動員。なめらかな現代語訳、現在通行の字体で表記した原文、わかりやすく、しかも原文の感動が伝わります。巻末には、作品の成立や時代背景などを解説、さらに地図・系図・年表・索引なども充実させました。()内は校注・訳者。未刊分は予価。★うつほ物語@(中野幸一)ISBN658014◆うつほ物語AISBN658015◆うつほ物語B★落窪物語・堤中納言(三谷栄一・三谷邦明・稲賀敬一)ISBN658017★和漢朗詠集(菅野禮行)ISBN658019★浜松中納言物語(池田利夫)ISBN658027◎狭衣物語@(小町谷照彦・後藤祥子)ISBN658029◆今昔物語集@(馬淵和夫・国東文麿・稲垣泰一)ISBN658035◆今昔物語集AISBN658036◆今昔物語集B◆今昔物語集C★住吉物語・とりかへばや物語(三角洋一・石埜敬子)◎松浦宮物語・無名草子(樋口芳麻呂・久保木哲夫)ISBN658040◆将門記・陸奥話記・保元物語・平治物語(矢代和夫・柳瀬喜代志・松林靖明・信太 周・犬井善濤)★神楽歌・催馬楽・梁塵秘抄・閑吟集(臼田甚五郎・新間進一・外村南都子・徳江元正)ISBN658042◆建礼門院右京大夫集・とわずがたり(久保田淳)ISBN658047