一九三八年十一月,ナチスによるユダヤ人襲撃は,散乱する窓ガラスの燦(きらめ)きに因み“水晶の夜(クリスタルナハト)”と名付けられた。その弾圧の象徴となった悪夢の夜が現代日本に甦(よみがえ)った! 中京財界の重鎮トマス工業元会長宮谷巌(みやたにいわお)の刺殺死体が,なぜか無数のガラス片に覆われていたのだ。さらに生前“ベルリンの水晶”と呼んでいた守り袋も消失し,事件を追う作家探偵霞田志郎(かすみだしろう)は,宮谷の渡独仲間片桐(かたぎり)を訪ねるが……。事件の鍵は大戦にあるのか? そして殺意を生んだある悲劇とは? 好評本格推理シリーズ第三弾!