揉め事始末人(トラブル・シューター)の事件簿
どんな女も可愛い
騙(だま)した女 裏切った女 罠を仕掛けた女 捨てられた女 プライドの高い女
裏社会専門の揉め事始末人(トラブル・シューター)・多門剛(たもんごう)は、暴漢に追われる美貌のブティック経営者逸見麻衣(いつみまい)を助けた。彼女は偽ブランド品の販売をネタに、元従業員の女から脅迫を受けているというのだ。アブク銭の匂いを嗅ぎ取った多門は、一肌脱ぐことになったのだが…。(「脅迫者」より)
轢(ひ)き逃げ、産業スパイ、産廃問題、美女失跡、銀行の貸し剥(は)がし…。その巨漢から“暴れ熊”の異名で恐れられ、女を観音様と崇める多門の活躍を、たっぷりの濡れ場と立ち回り(アクション)で描くピカレスク傑作集!
<著者のことば>
十数年前から、もっぱら書下ろしの長編悪漢(ピカレスク)ハードボイルドを手がけている。それ以前は、数誌の小説誌に読み切りの短編小説を発表していた。短編には短編なりの面白さがある。書き手はある種の技を求められるから、緊張感も味わえる。だが、どうしても書き足りなさを覚えてしまう。そんなわけで、ぼくはある時期から単発の短編小説は書かなくなった。
本作品は、裏社会の始末屋・多門剛を主人公に据えた連作小説である。一話完結の形をとっているが、レギュラーの脇役たちもほぼ毎回登場する。多門の成長ぶりや心の微妙な変化を書いた。そういう意味では、長編小説と言えるのではないか。