ノベルスの片手読み。
かっこいい!と思う。
菅 浩江
「私、変な男の人を、見たの!」楽器店2階の音楽教室で、生徒の小学生ユイカが泣き出した。商店街周辺に変質者が出没していた矢先の事件――だが、少女と弟の証言が微妙にズレて……(第一話「バイエルとソナチネ」)。ピアノ教師杉原亮子が解きほぐす生徒たちの心の襞(ひだ)と綾(あや)。そして音楽大学を首席で卒業しながら、人前で演奏できなくなってしまった亮子自身の過去の秘密。些細な事件や奇妙な悩みを、亮子先生が穏和な推理で鮮やかに解決する癒しのミステリー連作。
<時には懐かしく、時には哀しい推理>
漫画「ハッピー・マニア」 作者 安野モヨコ
子供の頃ピアノを習っていた。その頃のことを菅さんはやわらかな筆致で包むように思い出させてくれた。鍵盤(けんばん)の重み、押した時の音の丸い響き、バイエルのページの匂い。ていねいな描写で、ありありとその世界が浮かび上がる。時には懐かしく、時には哀しくそして時には、はっとする現実を「事件の推理」というメロディーがさまざまなアレンジをうけて描いて行く。
読み終わった時、私はピアノが弾きたくなっていた。