若狭(わかさ)の小京都・小浜(おばま)――
部下の死と、憧れの“女性”を結ぶ糸は?
八年の歳月が変えたものとは?
<刑事がホステスと無理心中!?>
死体で発見された部下・片山(かたやま)の無実を信じ、十津川(とつがわ)は彼の故郷・若狭(わかさ)小浜(おばま)に飛んだ。兄の死を予感していたという片山の妹みどりの家には空き巣が潜入。狙いは、遺品の日記と手紙だった。高校時代の同人誌仲間四人とのことを記(しる)したものがなぜ? そして十津川は、一年前のお水送り神事の夜に起きた市議殺しを、片山が極秘調査していたことを知る。同人仲間の容疑を晴らそうとした、友情に厚い片山がなぜ殺されたのか? 北海の小京都で十津川が知る悲痛な真実は!?
<著者のことば>
誰にとっても、故郷は忘れ難(がた)い。故郷を遠く離れて生きる人間ほど、故郷は、なつかしく、胸に迫ってくるといわれる。しかし、故郷とは、いったい何だろう。若い時、働くために故郷を離れて、大都会に出たが、年老いると、故郷に帰って行く人が多い。そう考えれば、故郷は生まれ、そして死ぬ場所かも知れない。
その一方、故郷を追われた人もいる。故郷は、大都会ほど、寛容ではないということだろう。故郷は、優しいと同時に、厳(きび)しい。温かいと同時に、時には、人を裏切る。そんな故郷が、私は好きだ。