現場に残された郷土玩具は何を語る?
殺された女たちを結ぶ見えない糸を追え!
苦悩する十津川警部、仙台―京都へ飛ぶ!
銀座クラブの美人ママが絞殺された。現場にでんでん太鼓が遺(のこ)され、被害者の口にはおしゃぶりが! 奇妙な遺留品の謎を解くべく十津川(とつがわ)が捜査に乗り出した矢先、東京で演歌歌手、仙台で女性評論家が殺される。二つの事件現場にも、こけしと切り裂かれた人形が置かれていた。十津川は、手掛かりが子守唄と関連していることに注目、京都へ飛び、被害者たちの生き方を痛烈に批判する「子守唄を守る会」の存在を知る。会のメンバーに疑惑をいだく十津川の前に、ある離婚裁判が浮上したが…。
〈著者のことば〉
子守唄が嫌いな人は、まずいないだろう。私も好きだ。しかし、テレビで、子守唄が歌われることは少ないし、日常生活で、子守唄が聞こえることも、めったになくなってしまった。確かに、子守唄には、意味のわからない言葉や、怖い言葉が並んでいて、現代的ではないが、子守唄が聞こえなくなったことと、日本の少子化問題がいわれるようになったことは、関係があるような気がして、仕方がない。
昔、どこでも、子供の歌が聞こえていた頃、母親も子供も、子守唄を、何となく、口にしていた。そのころがなつかしてくならない。いや、そのころの空気が、今、必要なのではないだろうか。