人間の弱さ、哀しさ、温かさ、ユーモアを見続けた珠玉のエッセイ
人生への限りない肯定を語る
知られるように遠藤周作の文学、とくにエッセイは、人間の哀しみや苦しみを肯定し、それを意味あるものへと転化させてきた。本書の収録の言葉でいえば、「私は亭主族という奴が好きだな(略)孤独で小心でさ、威張りたくって、そのくせダメな男で、これぁオレたちじゃないか」というダメな存在への共感と連帯にはじまり、「毅然として死ねない人よ。それでいいではありませんか。人間をこえた大いなる天、大いなる命は毅然としては死ななくてもそんなことは問題にしないのだ」という励ましにいたる。あるいはまた、「ぼくにとって何ひとつとして無駄なものは人生になかったような気がする」と、人生への限りない肯定を語る。(作家・加藤宗哉「まえがき」より)