イッセー尾形氏驚く! 文芸評論家関口苑生氏唸る!
「異能の人・原宏一。この技量は並大抵のものではない」
「家の中に変な男が棲んでるのよ!」念願のマイホームに入居して早々、妻が訴えた。そんなバカな。仕事、仕事でほとんど家にいないおれにあてつけるとは! そんなある夜、洗面所で歯を磨いている男を見た。さらに、妻と子がその男と談笑している一家団欒のような光景を! 注目の異才が現代ニッポンを風刺とユーモアを交えて看破する、"とんでも新奇想"小説。
カフカに勝る絶妙な仕掛け! 俳優 イッセー尾形
僕の芝居の登場人物の多くが企業戦士。「何故に日本人はそこまで仕事で摩耗するのか?」との感想が海外公演の折には多い。自己弁護を覚悟でいうなら、「今を取り上げるのが現代劇なら、働き過ぎの人が登場して当然」という意見が身内にある。本書は、金太郎飴のように何処を取っても激務の会社人間しか出てこない。小説を読む余暇(とき)ぐらい仕事を離れたいよ、と思うだろうが、そんな人にこそ本書を奨めたい。「ある朝、目が覚めたら自分が大きな虫に変身していた」あれは職場放棄のサラリーマンの話とも読める。カフカの仕掛けに勝るとも劣らない工夫を、本書の作者は試みている。