嵐の夜、孤島で巻き起こる猟奇殺人!
本格ファンを唸らせた傑作!
●本格ミステリ3位(原書房『2002本格ミステリーベスト10』)
● 『ダ・ヴィンチ』4位(Book of The Yearミステリー部門)
作家葛木志保(かつらぎしほ)が失跡した。パートナーの式部剛(しきぶたける)は、過去を切り捨てたような彼女の履歴を辿り「夜叉(やしゃ)島」に行き着いた。その島は明治以来の国家神道から外れた「黒祠の島」だった……。嵐の夜、神社の樹に逆さ磔にされた全裸女性の死体。さらに、島民の白い眼と非協力の下、因習に満ちた孤島連続殺人が! その真相とは? 実力派が満を持して放つ初の本格推理。
黒祠とは――
明治政府の採った祭政一致政策によって、神社は信仰の対象ではなく、国民が義務として崇拝する対象とされた。神社は国家の宗祀(そうし)として社格制度のもとに統合され、国家の施設とされた。全国の神社は位階制によって整然と編成され、行なわれる祭祀も国家の定めた様式に統一された。この統合に与(くみ)しないものは迷信として弾圧されなければならなかった。
国家神道の中にあって、黒祠とは、統合されなかった神社を言う。それは迷信の産物であり、言わば邪教である。