口先と押しの強さは天下一品!
勝海舟の父、最強にして最低の親ばか小吉が、座敷牢から難事件をバッタバッタと解決する。
時代小説とミステリーの二つのジャンルを過不足なく混淆(こんこう)させる困難に挑み、それを見事に達成させた本書は、岡本綺堂『半七捕物帳』から始まる捕物帳の世界に加わった、新たな傑作といっても過言ではあるまい。(末國善己氏「解説」より)
幕末に八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍をする勝海舟(かつかいしゅう)が産声を上げた文政(ぶんせい)六(1823)年当時、父親の小吉(こきち)は座敷牢に閉じこめられていた。本所(ほんじょ)界隈に轟(とどろ)く札付きのワルで、手のつけられない無頼(ぶらい)がたたったのだ。さてその小吉、暇(ひま)をもてあますあまり、奇妙な才能を開花させた。江戸市中で頻発する事件の謎を、たちどころに座敷牢探偵(アームチェア・ディテクティブ)するのだ。涙あり、喧嘩あり、これぞ人情時代小説!