実用品でもない、お金で買えない、ルールもない、保証もない……
愛とはなにか
『誰のために愛するか』という私のエッセーがよく読まれているのはどういう訳か、という質問を受けるたびに、渦中の私は、かなり羞(はじ)らい、それから少し居なおって自分を保っているだけで、それは自分の後姿について感想をきかれているようなものなのである。私の本に書いてあることなど、さまざまな古典という形で、何百年も、千何百年ものあいだ言われ続けてきたことなのだが、しいて言えば、人々が「愛」と呼ぶほかはないものの存在にどれほど飢えているかが、(中略)わかるような気がするのである。
本書より