斎藤茂太氏、芳賀 徹氏推薦
近代日本の国づくりはこの旅から始まった
130年前、彼らが目にした「世界」の光景
明治4年11月、新政府派遣の使節団が横浜を出港した。その顔ぶれは岩倉具視、大久保利通、木戸孝允、伊藤博文ら、新政府を代表する錚々(そうそう)たる面々で、1年9カ月をかけて米・英・仏・独・露など欧米先進諸国を視察する世界一周の大旅行だった。彼らは帰国後、その見聞をもとに新生日本の設計図を書き上げていくことになる。この旅で、彼らは何を見、何を感じたのか。それを再現するのが本書である。
異文明探索の現場へ 京都造形芸術大学学長 芳賀 徹
明治新政府はやはり革命政権だった。いまの日本からは信じられないような改革と冒険を矢継ぎばやに実行した。明治4年末から1年9カ月におよぶ岩倉使節団の西洋文明調査旅行は、その冒険の最たるものだった。
泉三郎氏は使節団の全旅程を数年かけて踏破し、研究しつくしたほとんど唯一の日本人。その泉氏が使節団の報告書『米欧回覧実記』の文章と数百点の写真・図絵、銅版挿絵によって、明治エリートたちの勇敢かつ周到な旅を再現してみせる。──これは明治日本の、19世紀世界への挑戦と対決の現場への、興味津々のガイドブックだ。
いまの日本に「喝(かつ)」を与える本 斎藤茂太
九六年、客船「飛鳥」の第一回世界一周航海船上で、リスボン・ニューヨーク間において泉さんは、五回「岩倉使節団」の講義をした。スライドと自らのナレーションを駆使したわかりやすく説得力ある内容だった。ホールは満員の盛況で、船客は口々に「いい話だった」と言った。その講義が今回『写真・絵図で甦る 堂々たる日本人』なる本になる。
もろもろの状況で、最近の日本人はすっかり自信を失っている。その日本に、「喝」を与えるのが本書ではあるまいか。「『堂々たる日本人』よ、甦れ」だ。本書を推薦する所以(ゆえん)だ。