木と向き合って半世紀。人間国宝が語る“日本人の心”
「世界に誇れる日本文化が築けたのは
木の恩恵を受けてきたからです」
<今こそ伝えたい、木の魅力・先人の知恵>
木の命を蘇らせるのが自分の仕事/弥生時代の棺に見る「永遠の命」と「造形の美」/木屑の一片も粗末にしない/木を買うときは命がけ/木は生き物、切ってからも生きている/清水(きよみず)の舞台にまつわる四〇〇年越しの計画/樹齢千年の木は千年後に真価を発揮する/木材としての運命が決まる一瞬/難しい技ほど平常心が大切/「人間の技術でできるわけがない」と言われた千筋の技/ケガも修行のうち/無駄に思える作業が後から大きな違いを生む/艶の加減は職人のセンスで決まる/世のため、人のため、もののため/ろくろを使って四角い器づくりに挑戦/デザインは自然から学ぶ/人間国宝に選ばれて/百万塔と心の伝承/被災者の心を勇気づけた座卓(目次より)
<木とのつきあいから学んだこと、出会った人々>
木にも顔があるといいましょうか、どの木として同じ顔のものはないのです。もちろん顔が違うように性質も違いますから、私は新しい木と出会うたびに、どうやってつきあっていこうかと心を砕きます。木の持つ顔や性質をうまく引き出し、器の中にそれらが甦ったときの喜びはなんともいえないものです。
木の芳(かぐわ)しい香りに包まれ、木の生命力を感じることのできるこの仕事を、私は自分の天職だと思っています。
(「まえがき」より)