天正(てんしょう)10年(1582)5月末,堺(さかい)の豪商邸(やしき)に集う男たちがいた。柳生石舟斎宗厳(やぎゅうせきしゅうさいむねよし)以下,又右衛門宗矩(またえもんむねのり),兵庫助利厳(ひょうごのすけとしとし)ら柳生党の面々で,随時入ってくる“明智謀反(あけちむほん)”の動きに備えてのことだった。諜報集団・柳生にとって天敵でさえあった織田信長(おだのぶなが)の滅亡は近い。一朝有事の際,彼らは堺滞在中の徳川家康(とくがわいえやす)を明智軍から守る覚悟であった。いち早く政治家・家康の将来性を見抜き,一族の命運を彼に託す決意を固めた石舟斎。ついに本能寺(ほんのうじ)で火の手があがったとき,一族は家康と共に決死の行動に出た…。家康との出会いから,二代秀忠(ひでただ),三代家光(いえみつ)まで,数々のドラマを経て幕府を支え,将軍家との強い絆を築き上げた異能軍団・柳生一族の実像とは?実力派が放つ渾身の徳川三代・葵の裏面史!