一九九九年、一月阪神・淡路大震災、三月地下鉄サリン事件、そして五月一日──。
神戸でのボランティア活動から帰京したタカユキ(十五歳)は惰性としか思えない高校生活に疑問を感じていた。電車一本の差でサリン禍を免れたヤマグチさん(三十五歳)はその後遺症ともいうべき自己喪失感に悩んでいた。長女が嫁ぐ日を迎えたアサダ氏(五十七歳)は、家族団欒最後の日をしみじみと実感していた……。
そして九六、九七……二〇〇〇年。三人は何を体験し、何を想い、いかに生きたのか。二十世紀末、六年間の「五月一日」からそれぞれの人生を照射した斬新なる試み。注目の山本周五郎賞作家が挑んだ日録(クロニクル)小説の傑作!