女たちの哀切と情念─。
美しくも儚(はかな)い珠玉の時代小説集
「なあ、後生や。後生やさかい、うちの亭主(ひと)返しとくなはれ」
龍馬の妻・お龍(りょう)の怨嗟(えんさ)に、刺客・今井信郎(のぶお)の妻は困惑した…(表題作より)
「ここが安住の地となりますように」維新から十一年。波瀾の半生を送ってきたいわに、平穏な暮らしが訪れようとしていた。旧幕臣の夫・今井信郎(いまいのぶお)はかつて京都見廻(みまわり)組に属し凄腕を揮(ふる)った剣客。その後、戊申(ぼしん)戦争などを転戦し、前年には西南戦争に参戦、ようやく激動に終止符が打たれたのだ。だが、東海道金谷(かなや)宿に隣接する村に腰を落ち着けた二人の前に、不審な女が現われた。厩(うまや)の陰からいわを見つめる影。様々な遺恨を背負った夫に向けられた刺客か? いわの心配をよそに、無関心を装う信郎。やがて、女の身許が判明した。女は、維新前夜、信郎に暗殺された幕末の雄、坂本龍馬(さかもとりょうま)の妻・お龍(りょう)だった…。(表題作より)
江戸期を生きた女たちの哀切と情念。注目の著者が、東海道を舞台に数奇な人生を活写した、美しくも儚(はかな)い珠玉の時代小説集!