花の精、狐女、幽霊……。
名手、異(ふしぎ)を志(しる)す!
「中国 怪異小説」の最高傑作が、ここに甦る!
妓女・蓮香(れんこう)と睦み合う仲となっていた書生・桑曉(そうぎょう)は、良家の令嬢・喬児(きょうじ)からも言い寄られ関係を持ってしまう。いずれが牡丹か杜若(かきつばた)か。目指す科挙の勉強にも身が入らず、二人の美女との甘美な関係に溺れていた。しかし、ある日桑曉は、蓮香の躯にまったく反応しなくなってしまう。喬児との情事は続いていたが、日に日に、精気を失っていく桑曉。その原因を蓮香は死霊と情を交しているせいだと言う。一方、喬児は蓮香の正体こそ雌狐が化けたものだと反論した。中傷合戦は恋敵を蹴落とそうとする鞘当てだと桑曉は高を括っていたが……。(「狐児」)
中国を知り尽くした著者が怪異小説の名作『聊斎志異』に挑み、その不思議な魅力を描き切った傑作書き下ろし!
『聊斎志異』
清代の作家・蒲松齢(ほしょうれい)(1640-1715)が、民間伝承をもとに描いた小説集。
神仙、狐、幽霊、妖怪などが起した不思議な出来事が全503編に綴られている。
幽霊や狐との甘美な恋物語、侠客・刺客の活劇、
異界の見聞記といった伝奇色あふれる作品の中に、
深い「人間性」が表現され、中国怪異小説の最高傑作と言われる。