十手が暴く真実に、さらけ出される悲哀と色欲と人情と……。
泣ける
熟練の妙手が描く時代小説集
「おめえの償いはこれで終わったわけじゃねえぜ。おめえを見逃したのはあの親娘(おやこ)のためだ。いいか。十蔵と会っちゃならねえ」岡っ引き市兵衛の言葉に、勘助は全身に衝撃が走った。市兵衛は知っていたのだ十蔵のことまでも。十六年前、勘助は十蔵とともに商家に押し入った。火を出し、大旦那夫婦と若旦那が焼け死に、母娘が残された。罪の意識に苛まれながら勘助は、鉋台(かんなだい)職人として、ひっそり生きてきた。商家を追われ、川に身を投げようとした、その母娘とともに。二十六夜待(にじゅうろくやまち)の日、十蔵と再会した勘助に、市兵衛は娘の嫁ぎ先が狙われていることを示唆する。勘助は十蔵との友情と娘の幸せとの狭間で懊悩(おうのう)し……。〈「二十六夜待」より〉犯人を追う執念か、自らの欲望のためか、七人の岡っ引きの活躍と暗躍が投げかける波紋。男女の機微、友情、愛情を、十手に託して、妙手が描く時代小説の真骨頂!
善か悪か! 江戸を闊歩する岡っ引き七人!
元鳥越町の伝五郎
薬研堀の市兵衛
神田の卯蔵
湯島切通町の弥吉
岩本町の伊太郎
まむしの忠治
駒形の嘉平