やさしさ、純粋さ、思いやり、素直な心……
そこはみんなの"忘れ物"が見つかる場所。
避暑地のティー・サロンでは不思議な体験が待っていた。
「ご近所の窓明かりが、一つ、また一つって消えてって、避暑地の夏は終わるの」青年は、寂しそうだった恋人の顔を思い浮かべていた。「夏が終わるって、何だか切ないものなのですね」そして三人のテーブルには、また沈黙が流れていた。それぞれが、未練がましく残っている夏の思いを、味わっているようだ。「彼女が、どこかで聞いてきたのです。あの避暑地に、今でも妖精が棲んでいる森があるらしいって……。一緒に探しに行こうって約束をしていたのに」青年の目に、涙が滲みでていた。
――「木漏れ日の下で」より