大磯・神戸―官能とサスペンス―釜山・慶州
「日本人の男は、みんな泥棒」と彼女は言った
17年前と現在の交錯。男の愛欲の果てに待つものは?
桐生(50)には気になる女がいた。自宅近くのバーに出入りする韓国人モデルのキムである。広告代理店を経営する彼は、かつて釜山(プサン)に愛人ミギョクがいた。
妻が妊娠中にもかかわらず、頻繁に渡韓(とかん)し逢瀬を重ねていた過去があった。低迷する仕事と崩壊寸前の家庭。キムに傾倒していく一方の彼は、神戸出張に誘うことに成功した。だが、有頂天の彼に娘が「ママの様子がおかしい、夜は外出ばかり」と告げた。妻が浮気? 相手は? やがて浮気の証拠を掴(つか)んだ彼の許(もと)に送られてきた、妻の卑猥(ひわい)なビデオ。決定的危機に陥(おちい)った時、桐生はキムからの韓国行の誘いに救われるように応じた。若い魅力的な愛人との甘い釜山、慶州(けいしゅう)への旅のはずだったが、なぜが、17年前に捨て去った女――ミギョクの影が、薄皮を剥(は)ぐように甦(よみがえ)ってくるのだった。男の愛欲の果てに待つものは…。