時代伝奇ここに復活!
朝鮮通信使の謎。必殺剣と朝鮮忍法の激闘!
奇想 魔岩に仕掛けた家康三百年の深謀
対馬藩の江戸屋敷を怪異が襲った。曲者は不可思議な術を使い、顔がなかった。更に奇妙な名を名乗った。「鈴木伝蔵」――50年も前に罠にかけられ刑死した男である。復讐か? あるいは……。一方、幕府の最重要な行事「朝鮮通信使」の来訪を前に、勘定奉行柳生主膳正(やぎゅうしゅぜんのしょう)と儒者林大学頭(はやしだいがくのかみ)は、対馬藩の事件を不穏なものとして警戒を強めた。神君家康公以来の将軍家の秘密に接近する者がいる! 通信使に隠された「魔岩」の謎。必殺剣と朝鮮忍法の暗闘、幕府の命運を担う柳生卍兵衛、そして庶民の苦衷を見つめる若き遠山影元(かげもと)。美貌の忍者・金春香(キムチュニャン)が秘めた真の狙いと意外な展開。日朝を舞台に新たなる時代伝奇小説の俊英が放つ、奇想と興奮の野心作。
朝鮮通信使―――李氏朝鮮の国王が日本の外交権者に国書を手交するため派遣した使節。1404年(応永十一年)足利義満が日本国王として対等の外交関係を開いたが、江戸時代になってからは朝鮮使節が来日するのみとなり、1607年(慶長十二)から1811年(文化八)まで、将軍の代替りごとに12回来日した。通信使一行は大坂までは海路、それ以東は陸路をとり、費用はすべて日本側の負担でその接遇は豪奢を極めた。1711年(正徳一)新井白石が簡素化したが、彼の失脚後はもとに戻された。