泣いたり笑ったり、怒ったり、そして恋をしたり……
人間ってなんて素敵なんでしょう――
魔法が使えたらと願っていた少女のひと夏の物語
父親とはいえ、やはり魔法界の頂点にいる大王は恐れ多い。王妃に救いを求めながら、瑠香(るか)は大王に頭を下げた。
「恋をしたな? 人間に……」
はッとして、その意味もわからず、瑠香は大王を見上げた。
「恋――って、何ですか?」
大王の目が、瑠香を見据えている。その目は、ほかの魔法使いに対するものと同じだ。厳しく冷たい目つきだった。……
「魔法使いに感情や心が生まれると、その代償に魔力はなくなってくる。……魔法使いにとって一番の強敵は『心』なのだ……」(本文より)