人はなぜ、最も大切な人をいちばん傷つけてしまうのだろう?
心のシェルターを求めて出逢った恵と少女いずみのミステリアス・ジャーニー
文芸評論家 結城信孝氏絶賛!
<世界は私たちに優しくない?>
「きっとあなたの方が似合うわ。とてもきれいだもの」
彼女は、くっと唇を噛んだ。
「お世辞なんか言わないで。わたし、お調子者だから、おだてられると、すぐ、その気になっちゃうの」
彼女が、なにに戸惑っているかはわからない。それなのに、なぜか彼女の気持ちがわかる気がした。
自分のことをきれいだなんて、一瞬でも思って、それをだれかに知られると、その瞬間に嘲笑われる気がした。自意識過剰で、被害妄想。そうは思うのだが、なにかがわたしの心を、きつく押さえ付けていた。
わたしたちは、ひどく似ているのかもしれない。・・・・・・本文より