胸のすく面白さ! 爽快時代小説
人情駕籠(かご)、江戸を走る!
火消しだった男と元相撲取りは、深川で暮らす息のあった駕籠舁(か)き。
火事に喧嘩にかどわかし、若い二人が厄介な事件の解決に東奔西走――。
うなぎ飯も白焼きも食べ終えた卓には、一合徳利(どっくり)二本が並んでいた。
「ねえ、尚平(しょうへい)さん……」
こどもの声を聞いてから、尚平がふさぎ気味である。おゆきが声を強めて呼びかけた。尚平はわれに返ったような顔で、おゆきを見た。
「この二本、お神酒(みき)徳利みたいでしょう」
おゆきが笑いかけた。尚平も目元をゆるめたが、お義理のような笑い方だった。
「これってなんだか、尚平さんと新太郎さんのようね」
ぼそりと口にしたおゆきの声は、さきほどまでのように弾んではいなかった。
(本文より)
相肩(あいかた)の想いを遂げさせてやりてぇ――。深川の駕籠舁(かごか)き新太郎は、相肩尚平(しょうへい)の煮え切らない態度に焦(じ)れていた。尚平にはおゆきという思い人がいたが、新太郎との絆(きずな)を大切にするあまり深いつきあいには進展しなかった。新太郎の勧めで、尚平は、おゆきと浅草寺仲見世(せんそうじなかみせ)に足をのばした。しかし、新太郎のことばかり考えている尚平におゆきは怒って帰ってしまう。その夜、ふて寝をする尚平のもとに手紙が届く。そこにはおゆきをさらったと記されていた……。二人はかどわかしに遭ったおゆきを救えるのか!? 若い駕籠舁きの友情とほのかな恋を描く、好評『深川駕籠』シリーズ第2弾!