謀略家・柳生又右衛門とその股肱(ここう)新陰流の秘剣が小太郎に迫る!
風魔の地・箱根山塊に風雲、急――。
勝利するのは剣の極意か?
徒手空拳の技か?
乱世の英雄を活写した痛快時代小説
征夷大将軍宣下(せんげ)を受けんがため、上洛の途にある家康。
柳生一門の厳重警固をくぐり、巨影が天下人の背後を衝(つ)いた!
「われら風魔衆に二度と手を出すな」
「……そのほうら風魔衆はおそるべき力をもっておる。野に放ったままでは、必ず徳川に敵対する者につく……」
「……徳川が風魔狩りをあきらめないのなら、次は本物の風魔が江戸に吹き荒れる」
家康の皺顔に、微かに恐怖が滲んだ。――本文より
慶長三年、天下人(てんがびと)・豊臣秀吉が歿(ぼつ)し、時の流れは徳川家康のものとなった。仕官への誘いを辞し、古河公方氏姫(こがくぼううじひめ)と静かに暮らす風魔(ふうま)の頭領・風間小太郎(かざまこたろう)は政権基盤を固める家康にとって最大の脅威であった。徳川忍び衆を率いる稀代の謀士・柳生又右衛門に、風魔狩りの命が下る――。氏姫を護(まも)るため、小太郎は古河の地を離れ徳川の本拠・江戸へ向かった!