ピーター・パンは,永遠の少年である。大人社会への仲間入りを断わり,夢の国「ないない島」で暮らす。「ないない島」は家庭や学校では味わえないスリルと遊びでいっぱいだ。魔法の粉を振りかけて現実を忘れ,いたずらに明け暮れるうちに,どんどん年を取っていく。しかしピーター・パンは,大人になりたくない。だから大人たちは,彼を“おとな・こども”と呼ぶ。つまり,ピーター・パン・シンドローム(PPS)とは,こういった“おとな・こども”の心の症候群である。だが,本書は,単なる分析だけの心理学書ではない。読者は,どうやってピーター・パン人間を夢の国から,現実の大人社会に,そして現実の家庭に連れ戻したらよいかを学ぶはずだ。しかも,そのハウ・ツーを,実習を通して身をもって体得するにちがいない。(「訳者まえがき」より)