医者を選ぶのも寿命のうち!
その医者に任せておけますか?
消化器外科医25年の体験記
患者、医療関係者、やぶも必読!
<医療過誤は報道されるだけマシになった>
多くの読者は(医療過誤報道の増加を)医療に携わる者のモラルが低下し、真剣さが欠如しているからだと思っているだろう。たしかに人間的に欠陥があると思える医師やどうしようもないヤブがいて、そうした連中がミスをするということはある。
しかし、個々の医師はさておき、医学界全体としてみるなら、私はまったく逆ではないかと思っている。医療過誤報道の増加は医師のモラルが低下したからではなく、報道されるだけマシになったのではあるまいか。
つまり、昨今、報道されているようなミスや事故は、これまでにも同じくらい、あるいはもっとたくさん起きていたのだが、患者側の無知につけこんだ医療関係者の密室体質によって、闇に葬られてきたのである。
(本文「12、なぜガーゼを置き忘れるのか」より)
<あまりに非合理で非効率的な指導方法>
おそらく、今日も日本中のどこかの病院でトータルスパイナルを起こしてしまい、肝を冷やしている新米外科医がいることだろう。トータルスパイナルという言葉は外科医1年目の私も知っていた。しかし、手術場でそれを初めて経験したとき、医学書の中の言葉と現実の光景は結び付かなかったのである。(中略)
私は医学界に言いたい。自分の手術の助手をさせるだけで「俺のような手術ができるようになれ」という指導方法はあまりに非合理で非効率的である。大工や板前の修業なら、それでいいのかもしれないが、医師は相手が生きている人間である以上、練習や実験はできないのである。
(本文「9、麻酔事故はこうして起こる」より)