パレスチナ移民たちの心情を描く傑作短篇集
力によって追放され、世界のどこにいようと「よそ者」として日常を引き裂かれ続けるパレスチナ人たちは、あなたのすぐ隣にもいるかもしれない。ーー安田菜津紀氏(Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)推薦!
2022年アトウッド・ギブソン・ライターズ・トラスト・フィクション賞最終候補作
母国について教えた恋人が救済活動に目覚めていく姿に戸惑う医師
かつて暮らした国への小さな投稿によって追い詰められていく数学者
ルームメイトたちに溶け込むために架空の恋人をでっちあげる大学生
正規採用と引き換えに違法なミッションを引き受けてしまう司法修習生
妻と娘のために禁断の取引に手を伸ばしてしまうプログラマー……
安住の地となるはずの国で心揺らぐパレスチナ移民たちの日々が、珠玉の9篇に。瀬戸際に追い詰められながら自らのアイデンティティを探る姿を多彩な筆致で綴る、カナダ発傑作短篇集。
【編集者からのおすすめ情報】
2023年秋以降ガザ地区の惨状が世界中に発信されていますが、パレスチナの人々の苦難は1948年の「ナクバ」(イスラエル建国に際して70万人以上のパレスチナ人が難民化)に端を発しています。本作に登場するのも、祖父母や父母、あるいは本人が故郷を失いやむにやまれずカナダに移り住んできたという人たちです。しかし安住の地を得たと思いきや、ふとした局面で差別や偏見、居づらさを感じ、身を小さくする思いで暮らす人々。そんな移民たちの九つの物語です。パレスチナの苦難の歴史とともに、海外からの移住者が増えている今の日本で、彼らの心の内にも思いを馳せるきっかけとなれば幸いです。