それでも生きろ、と言うのなら──
明治四十一年、十二歳のみつは、実父の持ってきた綺麗な着物に惑わされて、奈良から大阪に出たが、二百五十円で売られたことは後から知った。自分で自分の人生を決めることは出来ないと思い知らされる出来事だった。十三歳で舞妓・菜乃葉となり、旦那に身の潔白を証明するために小指を落としたのは、十四歳。かつて恋心を抱いた役者の写真を持っていたことが原因だった──。
東京に出て、新橋で芸妓・琴葉となった。相場師と結婚し、アメリカに渡った。その土地で出会った女性と恋をした。帰国して映画女優となった……運命に翻弄されながらも、自身の人生を手放さなかった生涯を描く。
【編集者からのおすすめ情報】
「自分で決める」という行為は、歴史の中で、長いあいだ「女性」から遠ざけられてきた。
テキストレーターのはらだ有彩さんに、本作の解説をご寄稿いただきました。これは冒頭の一文です。歴史に名を残す人物たちの生涯を新たな視点で紐解いた『「烈女」の一生』の著者が、本作の主人公・みつの人生をどのように読んだか。本編とあわせてぜひお読みください。