この街の「フーゾク」は世界一である。
こんな江戸語、知っていますか?
「割床(わりどこ)」「廻(まわ)し」「腎張(じんばり)」「月役七日(つきやくなのか)」「鉄棒曳(かなぼうひき)」「新下(しんくだ)り」「菊座(きくざ)」「出合(であい)茶屋」「陰間(かげま)」「岡(おか)場所」「飯盛(めしもり)」「口入屋(くちいれや)」「鳥屋(とや)」「素見(すけん)」「伏玉(ふせだま)」「呼出し」「精進(しょうじん)落とし」「切見世(きりみせ)」「下湯(しもゆ)」「内済(ないさい)」……
全部わかった人は「立派なヘンタイ」です。
■現代日本人にも通じる江戸市民の「性愛感覚」
江戸は、前近代的な政治システムと重苦しい世間体に支配された街だった。当然ながら夜の生活も不自由極(きわ)まりない。ゆえに過剰ともいえる性風俗の繁栄がもたらされる結果となる。
かのシーボルトが品川宿で目撃したのは、位の高い御仁(ごじん)が白昼堂々と娼家(しょうか)に出入りする姿だった。「まるでコーヒーでも飲みにいくかのように!」と驚嘆しながら、彼は記した。
現代日本の男たちが、風俗産業に対してさほど後ろめたい感情を持ち合わせていないのも、やはりそうした江戸の遺伝子が作用しているからなのだろうか。本書では、江戸の下半身にまつわる諸事情をざっと案内したが、シーボルトのように驚くか、思わず同感するかは、読者個々の判断に委(ゆだ)ねよう。