「異端者の叫び、外道の呻きを発見すること、これがアウトロー文学」
「女は生理的嫌悪感が走るとその男とはすぐに別れるが、その男に月夜の晩に口説かれた科白(せりふ)などは何時までもおぼえているものだ」
「男は別れた女が不幸になるのは望まないが、あまり幸せになるのも望まない」
「人間は不本意に生き、不本意に死んでいくものだ。だからせめて快楽くらい求めてもいいと思っている」
「医者の言う事をよく聞いて、酒も飲まず、煙草も吸わず、甘いもの、辛いものも断って、禁欲生活を守り通し、百まで生きた馬鹿もいる」
■失意のとき、逆境のときこそ生きる言葉の数々
耽美と反逆の作家が紡(つむ)ぎ出してきた言葉の数々――。そこには異端者の叫び、外道の呻(うめ)きがある。老いてなお快楽を求めて、欲望に忠実に生きようとするSM官能小説の大家は、「一期は夢よ、ただ狂え」とばかりに、生の喜びを追求していく。
渥美清、たこ八郎、谷ナオミ、小池重明、米長邦雄など、ユニークな人々との交遊の中から浮かび上がるのは、異端こそが正しく、美しいという、この世の本当の姿だ。失意のとき、逆境のとき…これらの言葉に触れて、人は楽になることができるのかもしれない。なぜなら、すべてを肯定すればこの世に制約などない、と気づくからだ。
本書の表題は、氏が愛唱する江戸時代の流行歌「隆 達節(りゅうたつぶし)」から選ばれた。