世界一の汽水域
東京湾の秘密
湾内で捕れる食用の魚だけで82種も。
面積当たり世界一の漁獲高を誇った過去を持ち、いまなお現役。
種類も量もこんなに捕れる!
アジ・サバ・タイ・スズキ・カレイ・サヨリ
アナゴ・ウナギ・サワラ・イカ・ボラ・カニ
シャコ・カキ・ハマグリ・アサリ・シジミ……
どれもが、かつて東京湾で日本一の漁獲高となったことがありました!
限りなく埋立てを続ける江戸前の海には、臨海副都心ができ、湾岸道路や鉄道の高架が走り、羽田空港も拡張し、ゴミの埋立て処理場としても限界に近づきつつある。誰が見たって、もう江戸前の面影なんかほとんどない。
では、本当に江戸前の海は死んでしまったのだろうか?
浅瀬が埋め立てられても、海が汚染されても、魚たちは健気(けなげ)に生き続けている。ただその姿が見えないだけなのだ。だから、江戸前の伝統漁法を引き継ぐ漁師もいる。釣り船もある。わずかな浜辺には貝類やカニだって無数にいる。
(本文より)
■東京湾は、豊饒の海だった!
昭和30年代、日本は漁業の総水揚げ量が年間200万トンを超え、世界一の水産大国だった。そのうちの3万トン以上が江戸前の海・東京内湾(ないわん)で捕(と)れたもの。狭い東京湾は日本一の漁場で、面積当たりの漁獲量でいえば世界一の海だった。昭和38年には江戸前の海の漁業権が放棄されたが、近年は水質も甦(よみがえ)り、今なお魚類の宝庫であり続けている。だが、中型魚の王様・スズキが大量に捕れ、コハダが大群をもって泳ぎ渡り、フグ釣りがブームに沸いていることを知る人は少ない。
江戸前の魚は鮨(すし)や天麩羅(てんぷら)の種(たね)となって人々に愛され続けてきた。その美味(おい)しさの秘密に迫りながら、豊かな海・東京湾の歴史と現状を徹底的に考察。一読、江戸前の魚が食べたくなる東京湾ガイド!