恐慌の経済学
「大英帝国はナチスを見習え」と、ケインズは言った。
――なぜドイツだけが3年弱で世界大恐慌から脱出できたのか?
――「国による有効需要の創造」の劇的効果を検証する!
ヒトラーというと軍備を拡張することで失業を減らしたと思われることが多いが、それは正確でない。
ナチス政権の前半期に、国民のために支出した費用は、ナチス政権前よりも著しく大きい。また国民総生産に占める軍事費の割合も、1942年まではイギリスよりも低かったのである。
ヒトラーは軍拡によって失業を減らしたのではなく、ケインズ理論そのままの公共投資を行なうことで、失業を減らしたのである。
(本文から)
■ケインズ理論の忠実な実行者、ヒトラーのもう1つの顔
1930年代、世界大恐慌の荒波を受けて、ドイツ経済は完全に破綻(はたん)していた。失業率はなんと34%、600万人以上の成年男子に職がなかった。
「不況期には政府が財政出動をして有効需要を創出し、まず失業を減らす」――ケインズ理論の忠実な実行者・ヒトラーは、アウトバーンの他、住宅建設、都市再開発などの積極的な公共事業を行ない、わずか3年でドイツ経済をみごとに復興させる。
革新的な大経済学者の経済理論が恐慌に対して有効であることを、ヒトラーは証明してみせたのだ。
なぜドイツだけが大恐慌から脱出できたのか? ケインズとヒトラー、2人の巨人の数奇な関係から見えてくる「恐慌の経済学」!