天皇に代わって〈神〉になろうとした男の苛烈なるメッセージ
なぜ決行は1970年11月25日だったのか?
三島が作品に込めた真の願いとは?
戦後日本にかけた大きな期待『潮騒』
対米従属への痛烈な批判『金閣寺』
家長不在となってしまった日本『鏡子の家』
何もしない国家と天皇への絶望『サド侯爵夫人』
自らが〈神〉となるための決起『豊饒の海』
■戦後日本に対する死を賭(と)したメッセージ
1975年11月25日、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決を遂げた三島由紀夫。その理由を巡っては様々な解釈が試みられてきたが、どれも十分とはいえない。それは表現者としての三島と、実行者としての三島との関連を解き明かしていないからである。だが、その答えは、生涯にわたる三島の作品の中にあった。
戦後日本への期待を裏切られ、次第に批判を強めていくなかで、三島はさらに、もはや〈神〉ではなくなった昭和天皇を否認し、代わって自身を〈神〉としようとするに至った。『潮騒』から『豊饒の海』まで、一連の作品を読み解くことを通して、三島の自決への軌跡をダイナミックに浮かび上がらせる。