アメリカの後追いでは日本の創造力は育たない
日米両国で活躍した元NASA研究者による比較文化論
もう一度ここで、日本人が背負い、育ててきた伝統的な文化に拠(よ)って立つ日本の文明を見直してみる必要があるのではないか。
日本人が培(つちか)ってきた我が国固有の文明と、私たちの使うことば、つまり日本語、そして私たちを取り囲む自然環境との関わりについて再考し、私たち自身が構想する我が国の未来のあるべき姿を呈示してみたい。(「プロローグ」より)
■日本人ならではのすぐれた思考法とは
日本人はアメリカ人に比べて論理的でないということがよくいわれる。それはアメリカ人が「論には論」であるのに対し、日本人は「論より証拠」という考え方だからだ。確かに、こうしたアメリカのスタイルに見習うべきところはあり、実際、日本はそれを追いかけ、さまざまなところで導入してきた。
しかし、アメリカ的なディベート文化などを、単に真似することが本当に望ましいことなのか。それによって失われたものは、むしろ日本的な思考の良さだったのではないか。今こそ、その日本の「知的風土」がどのようにして培(つちか)われてきたのかを見直すことが必要である。