戦前と戦後の奇妙なまでの符合、
日本はどこに向かうのか――――
憲法改正、海外派兵、
金融危機、震災、汚職……
浜田国松(はまだくにまつ)議員
……軍部の人々は大体(だいたい)においてわが国政治の推進力はわれらにあり、……という慨(がい)[気概]を持っておらるるということは事実である。……五・一五事件しかり、二・二六事件しかり、……この独裁思想、軍部の推進的思想というものが、総(すべ)て近年の政治の動揺の本(もと)になる。……
……陸相寺内(てらうち)君は、浜田の演説中軍部を侮辱するの言辞(げんじ)があるということを仰(おお)せられた。どこが侮辱しておる。(拍手)……いやしくも国民代表者の私が、国家の名誉ある軍隊を侮辱したという喧嘩(けんか)を吹掛(ふっか)けられて後(あと)へは退(ひ)けませぬ。(拍手)……事実を挙げなさい。……
寺内寿一(ひさいち)陸軍大臣
私はただ今浜田君が言われたようなことを申してはおりませぬ。速記録をよくご覧くださいまし。(発言する者多し)
浜田議員
……速記録を調べて僕が軍隊を侮辱した言葉があったら割腹(かっぷく)して君に謝(しゃ)する。(「ヒヤヒヤ」拍手)なかったら君割腹せよ。(拍手)
1937(昭和12)年1月21日、第70回衆議院本会議にて
■やはり、歴史は繰(く)り返されるのか
1890(明治23)年から1947(昭和22)年まで、全92会期が開かれた帝国議会。そのなかから歴史的事件・事象を抽出、何が話し合われ、どのように決まったかを探ったのが本書である。
憲法改正、海外派兵、金融危機、震災、汚職……帝国議会(戦前)と国会(戦後)では、驚くほどの一致を見せる。大局観や識見(しきけん)を有(ゆう)した首相の言葉、命がけの議員の演説、躍動した論議は今も輝きを放つ。
帝国議会が戦争を止められなかったこと、その際の攻防は、安全保障問題に揺れる現在の日本に「教訓」を与えてくれるだろう。