十津川警部、“円空仏(えんくうぶつ)”の謎に挑む!
失踪した老夫婦を追って、歴史と自然の地へ──。
熟年雑誌の読者モデルをつとめる鈴木夫妻が失踪(しっそう)した。楽しみにしていたお伊勢(いせ)参りの旅に出かける当日、乗車予定の「のぞみ」に姿を見せなかったのだ。それどころか、二人の名を騙(かた)り旅行を続ける不審な中年カップルが出現。夫妻に何が起こったのか? 捜索願が出されるが、直後、隅田川(すみだがわ)に他殺体が浮かぶ。遺体は伊勢路に現われたカップルの女性と判明。捜査に乗り出した十津川(とつがわ)は、鈴木家で厳重に保管された円空仏(えんくうぶつ)を発見する。木彫りの仏像と事件に関わりはあるのか? 謎を追って、十津川は伊勢志摩(いせしま)に向かうが……。
<著者のことば>
毎年、日本各地に取材に行くと、思わぬ事件、事故にぶつかることがある。伊勢志摩(いせしま)の取材の時も、赤福(あかふく)事件が起きた。
あの時は、赤福が、悪者扱いされたが、丁度、伊勢に行っていた私の眼から見ると、赤福は、とても悪者には見えなかった。今、観光客で賑(にぎ)わう、「おかげ横丁」は、赤福が建てたもので、赤福が復活すると、みんなが祝福した。こんなことは、現地に行かないとわからないから、誰が善者で、誰が悪者かも、簡単にはわからない世の中である。