浅見光彦、“弔いの島”の連続変死事件を追う
長崎・軍艦島で何があったのか!?
圧倒的人間ドラマを描いた渾身作、初のノベルス化!
〈関わった人間の記憶に時効はない――〉犯罪の存在を匂わせる言葉を残し、元刑事の後口能成(うしろぐちよししげ)が静岡・御前崎(おまえざき)の海岸で他殺体となって発見された。五島(ごとう)列島で静かな余生を送っていた男が、なぜこんな場所で? 取材で知り合った浅見光彦(あさみみつひこ)は事件の調査を開始、後口が、三十年前、長崎・軍艦島(ぐんかんじま)で起こった連続変死事件を追っていた事実に注目する。廃墟の島の過去と殺人事件に接点は? やがて、娘が暮らす信州・松代(まつしろ)で遭遇した人物に、後口が重大な関心を抱いていたことを知った……。浅見光彦、シリーズ最大の難事件に挑む!
<著者のことば>
長崎半島の沖に浮かぶ「軍艦島(ぐんかんじま)」の異様な光景を見て、かつてその島で繰り広げられたであろう物語を想像しない人はいないと思う。いまは廃墟と化したあの島で、最大五千人もの人人が暮らしていた。そしてある日、誰もいなくなった。日本で最初の「高層住宅」が林立している、その外観をそっくり残したまま、無人の島になった。
軍艦島の繁栄が終わりを告げる最期の時まで島にいた人と、取材の途中で出会った。その人のイメージが登場人物を形作っている。島への愛惜(あいせき)が語られるのを聞きながら、僕の脳裏(のうり)には哀しくも妖(あや)しいストーリーが浮かび上がった。