現代の闇をえぐり出すサスペンス傑作
夜の大都会――
“過去を失った男”、“過去から逃げてきた女”……
偶然の出会いが事件の始まりだった……
訳(わけ)ありの過去を消して再出発させる“生かし屋”兵藤(ひょうどう)。彼は、自身の記憶を失っていた。ある日、上月(こうづき)エリという家出女性を暴漢から救うが、襲撃者の正体は謎だった。さらに、エリに瓜(うり)二つの葉月(はづき)ゆりという女も襲撃される。ゆりもまた、許嫁(いいなずけ)の失踪が原因(もと)で家を出ていた。同一犯か? 直後、その元許嫁が死体で発見され、女たちの事件(トラブル)が連鎖を始めた! 一方、失踪人急増問題を追う棟居(むねすえ)刑事は、“生かし屋”組織に関心を抱き、捜査を始める。やがて、兵藤の秘密が暴(あば)かれる時、忌(い)まわしき現代社会の悪夢が浮上した!
<著者のことば>
生かし屋。この世に絶望したり、人間関係の軋轢(あつれき)、破産や病気などさまざまな不幸によって生きているのがいやになった人たちを立ち直らせる人生再生プログラムというボランティアの組織がある。
過去を失った男がこのボランティアの一人になって巻き込まれる恐るべき完全犯罪。医療のマスクを着けたグローバルな悪魔のビジネスを相手に孤独な闘(たたか)いを始めた。都会は幸福を求める人たちが集まって造ったはずでありながら、人間性が希薄になってくる。この作品は人間性を喪失した巨大な犯罪集団と、人間を愛する者との絶望的な闘いの中に構築されたミステリーである。