豪華寝台特急が北へ運んだ殺意!
札幌へ向かう車内で惨劇が!
十津川警部の英知が真相に迫る──
〈著者のことば〉
犯人が逃亡する先や殺人事件の起こる場所には、「北の地」が似合う、と思うのは私だけだろうか。作品の舞台を北に採(と)ることが多いのもそのせいである。
「北の地」と「列車」が組み合わさるとき、頭の中には、さまざまな人間模様とドラマが浮かんでくる。
今回の短編集には、ちょっとした仕掛けがある。オホーツク海を臨(のぞ)んで走っていた天北(てんぽく)線の急行「天北」が舞台の1編と、天北線が廃止された後の廃駅を舞台にした1編を収めた。
背景となった時代の変化も同時に楽しんでいただきたい。
札幌(さっぽろ)に到着した寝台特急「カシオペア」車内で若い女性の刺殺体が発見された。現場となったのは展望室タイプの最上級スイート個室。その部屋の男性客は姿を消していた。妻との旅行で同じ列車に乗り合わせた警視庁の退職刑事・内山(うちやま)には、男性客とどこかで会っている記憶があった。北海道警の捜査に協力した内山は、元上司の十津川警部に連絡。やがて8ヵ月前に渋谷(しぶや)で起きた資産家殺しとの関係が浮上した。その事件は容疑者の自殺で決着していたが……。消えた男性客の正体と行方は? 複雑に交錯(こうさく)する謎に十津川が挑む!