茶屋、怒りの推理行
母殺しの罪を着せられた娘の悲痛な叫び。
警察―検察―裁判所の横暴に切り込む
“名川”シリーズ最新刊!
冤罪(えんざい)に導いた警察の絵図を崩せ!
〈著者のことば〉
事件を描く小説には、読者を納得させるストーリーという一本の線が必要であるように、実際に起きた事件を扱う警察には、事件を解決に導くストーリーがなくてはならない。それのこしらえかたの巧(たく)みな人がいる、という話を、長老の弁護士に聞いたことがあった。
「母を殺した罪で服役していました」旅行作家・茶屋次郎(ちゃやじろう)の許(もと)を訪れた読者・細谷水砂(ほそやみさ)は、衝撃の事実を口にした。一貫して無実を主張したにも拘(かか)わらず、警察の思い描いた絵図――ラブホテルに入った母親に激怒、放火殺人に至った――通りに判決が下ったという。冤罪(えんざい)を晴らしたいという訴えに茶屋は、世界遺産の地・広島に向かった。やがて浮上する、火災のもう一人の被害者の奇妙な過去。その男は事件の2年前に失踪(しっそう)していたというのだ。引っかかりを覚えた茶屋は、警察の牽制(けんせい)も無視し、怒りの推理行を続けるが……。