定年目前で警察を辞めた男。
その姿が病床から消えた時、
九州一の繁華街、中洲で警官殺しが!
薄幸の美女のため、
旅行作家・茶屋次郎が男気を見せる!
〈著者のことば〉
会社員だったころのほぼ4年間、博多(はかた)にいた。出張所へ同時に3人が赴任したのだが、2人は博多の水が合わず東京へ帰った。私だけは何故か博多が親しめる土地になった。その一つは中洲(なかす)での飲食に楽しみを覚えたからである。中洲は、他の繁華街とちがってどこか大ざっぱで、大味だ。当然、高級店もあるが、ツンとした冷たさがない。
脳疾患(のうしっかん)で入院中の老人・糸島末彦(いとしますえひこ)が失踪(しっそう)した。彼の年若い恋人・大谷深美(おおたにふかみ)から捜索を依頼された旅行作家・茶屋次郎(ちゃやじろう)は、糸島の訛(なまり)を手掛かりに福岡に飛んだ。糸島は元警官で、定年目前に退職、その後地縁もない山口の岩国(いわくに)や京都を経(へ)て上京したことが判明する。なぜ彼は定年を待たず退職し、居を転々と移したのか? 横槍(よこやり)を入れてくる県警を尻目(しりめ)に、やがて茶屋がその陰(かげ)に、一人娘の痴漢(ちかん)被害があり、それが揉(も)み消されたことを掴(つか)んだ時、博多で警官殺しが続発した! 九州一の繁華街・中洲(なかす)に消された謎を追う、傑作旅情推理。