この門をくぐる者、
全ての希望を捨てよ
今日もまた、光なき街に
哀しき物語が生まれる。
〈著者のことば〉
〈魔界都市〉の物語は単純だ。
出会い――別れる。これだけだ。
明るい別れもある。
だが、〈新宿〉は、やはり、
悲愁(ひしゅう)と哀切(あいせつ)がよく似合う。
そんな物語が6本集まった。
さまざまな男女が秋(あき)せつらと出会い、
やがて去って行く。
送る者の顔はやはり美しくあってほしい。
だからこそ、私はせつらを創(つく)り出したのだ。
「この門をくぐる者、全ての希望を捨てよ」
そう落書きされた3つの〈ゲート〉だけで〈区外〉と繋(つな)がる〈魔界都市“新宿”〉。〈魔震(デビル・クエイク)〉に見舞われ〈亀裂〉に画(かく)された副都心は、妖物(ようぶつ)が跋扈(ばっこ)する街へと変貌(へんぼう)した。その片隅(かたすみ)でせんべい店を営(いとな)む秋(あき)せつらは、絶美の美貌を誇る人捜し屋(マン・サーチャー)でもあった。ゾンビに恋人を殺された女、地図に記(しる)されぬ場所に逃げ込んだ男と女、幽霊船から帰還した夫妻など、奇怪な依頼は尽きない。やがてせつらが不可視の妖糸(ようし)をふるう時、斬(き)り裂(さ)かれた闇の向こうに待つものは? 不朽(ふきゅう)の大人気シリーズ最新作!