「おいしい食事」には、智恵と戦略が詰まっている
●コーヒーの売上が急上昇した、起死回生の広告
●高いチーズから売れていくデパートの秘密
●うまいカレーを作るために必要な「鶏の心理」
経済とマーケティングを「食の歴史」から分析する
●コーヒーが制した東京ホテル戦争●金持ちと貧乏人はやることが同じ●自分の都合を優先して成功した喫茶店●今日の「贅沢(ぜいたく)」は明日の「当たり前」●誰が買うのか、こそ発想のコツ●客は最上のものだけを喜ぶのではない
<「最高のサービス」とは何か。そのヒントがここにある>
食文化の奥は深い。
京都のある料亭では、夕方のお客は二万円ほど値段が高くなる。
数寄(すき)を凝らした庭園に夕闇が迫り、昼と夜の境界線が到来した一瞬に、女性がぼんぼりを掲げて歩を進め、池の岩の上に置く。その瞬間、ぼんぼりの柔らかな光が池の水面を走って座敷に届き庭の光景が一変する。それを味わえるお客は二万円高価になるのだという。
この話に感心したり呆(あき)れたりするのは簡単だが、そこを一歩踏み越えて、同じことをフランス料理や中華でできないか、と考えることが大切だと思うのである。(「まえがき」より)