第11回松本清張賞 受賞作家のデビュー作
信長、秀吉、家康に仕えた伝説の鷹匠一代記!
文芸評論家・縄田一男氏、賞賛!
「戦国武将の動向を大陸と二重写しにする視点、家次が秘やかに思いを寄せるお市の方の描き方など、心憎いばかりである」
浅井(あさい)家鷹匠(たかじょう)小林家次(いえつぐ)は、小谷(おだに)城落城の朝、狼を捕獲する白鷹を目撃する。その白鷹こそ伝説の「からくつわ」だった。捕虜となった家次に、敵将信長は「白鷹を捕らえてみせよ」と命じた。ここに、織田家鷹匠としての人生が幕を開けた…。白鷹との誇りをかけた対峙(たいじ)。国使を自称する韃靼(だったん)人の鷹使いとの交誼(こうぎ)。信長、秀吉、家康と仕(つか)えた天下一の鷹匠の生涯を描く時代大作!
<鷹狩りのルーツから鷹匠の細かい技まで見事に描く
諏訪流第十七代鷹師 田籠(たごもり)善次郎>
神の化身の如き白鷹に命を捧げる鷹匠の姿は、私に夜明け前から日暮れまでひたすら鷹を据えて歩き林間に鳥の声を聴いた、若き日の思い出を蘇らせてくれた。
小林家次(家鷹)は、生きる所以(ゆえん)である鷹匠の技術をもって『からくつわ』という名鷹とめぐり会い、また気性の異なる鷹に接するかのごとく、個性の強い四人の大名達に仕える。
誇り高く己の生き方を変えない鷹の純粋な姿には汚れなき心の世界がある。人間はそこに憧れや神の教えを見るのである。モンゴルまで取材にでかけ、鷹狩りのルーツから鷹匠の細かい技まで見事に描ききった山本兼一氏の情熱は家次(家鷹)に劣らないものがあった。