鳥羽時代小説の真髄、大きな文字で再刊!
怨念と狂気を孕(はら)む刀──
叔父と盟友が次々と斃(たお)されて…
凄絶になってゆく幕閣の暗闘。
それに巻き込まれた唐十郎は──
動乱必死の第10弾!
「こやつに、鬼哭(きこく)の剣は通じぬ」狩谷唐十郎(かりやとうじゅうろう)は唸(うな)った。武士の巨躯(きょく)は丸みを帯(お)び、剣気に覇気すら感じられない。それでいて、切っ先が喉元(のどもと)に槍の穂先のように鋭く迫ってくるのだ。──唐十郎の叔父が斬殺され、将軍への献上刀「鬼切丸(おにきりまる)」が奪われた。さらに、幕府の御目付、御腰物奉行、伊賀者等の暗闘が始まる。その最中(さなか)、鬼切丸奪還を頼まれた唐十郎の前に最強の敵が!