うそも方便(ほうべん)、厄介(やっかい)ごとはほらで笑ってやりすごす
江戸の市井(しせい)を鮮やかに描く極上の人情ばなし
隠居した深川(ふかがわ)の茂平(もへい)は大工の元棟梁(とうりょう)。いつの頃からか「ほら吹き茂平」と呼ばれるようになった。別に人を騙(だま)そうとは思っていない。ただ、いろんな癖(くせ)の人をみて、ついつい言ったお愛想(あいそ)が思わぬ騒動を起こすのだ。その日も、一向に嫁(とつ)ぐ気のない娘の相談に来た母親に、悪戯(いたずら)心が頭をもたげて……。江戸の市井(しせい)にあふれる笑顔や涙を温かく描く豊穣(ほうじょう)の人情小説集。