母の死、恋の罠(わな)、敵(かたき)討ち……
強くなれ!
苦悩するものに寄り添う、軍鶏侍・源太夫。
源太夫の導く道は、剣の強さのみならず。
「まさか、市蔵(いちぞう)が」忽然(こつぜん)と姿を消した岩倉源太夫(いわくらげんだゆう)の次男市蔵。源太夫が上意討ちした男の息子だった。すべてを覚悟の上で引き取り育てていたのだ。しかし、何かが、その真相を告(つ)げてしまう。尊敬する父が、実の親を殺した敵(かたき)……。失踪直前、明るかった市蔵は塞ぎがちになっていた。そして父として源太夫がとった行動は──。人の成長と絆(きずな)を精緻(せいち)に描く、傑作時代小説。