心の故郷がここに
軍鶏侍の一番弟子が、江戸の娘に恋をした。
美しい風景のふるさとに一緒に帰ることを夢見るふたりの運命は──
軍鶏(しゃも)侍・岩倉源太夫(いわくらげんだゆう)の道場の若き師範代・東野才二郎(とうのさいじろう)は、藩命で赴(おもむ)いた江戸で、ならず者に絡(から)まれる女性を救う。名を、園(その)。源太夫に実父を斬られ、今は侠客(きょうかく)の娘として育てられていた。園の気風(きっぷ)の良さ、才二郎の誠実さに、やがて二人は惹(ひ)かれあっていくが、園に忍び寄る不穏な影が……。美しき日本の風景を背景に静謐(せいひつ)な文体で贈る本格時代小説。