身代金は三千両。
市兵衛、交渉人になる!?
市兵衛の前に現れた依頼人は、若き日の初恋の女性(ひと)──
「市兵衛(いちべえ)さんにしか頼めねえんだ」夏の日、渡り用人・唐木(からき)市兵衛の許(もと)を、請(う)け人(にん)宿(やど)の主(あるじ)・矢藤太(やとうた)が訪れた。依頼は攫(さら)われた元京都町奉行・垣谷貢(かきたにみつぐ)の幼い倅(せがれ)の奪還。拒(こば)む市兵衛に矢藤太は、倅の母親はお吹(すい)だと告げる。お吹こそ、青春の日、京で仕(つか)えた公家(くげ)の娘で初恋の相手だった。奪還を誓う市兵衛。だが、賊との激闘の中、市兵衛は垣谷家の大罪と衝撃の事実を知ることに……。